大学時代、被災学生への招待という形で香港のデザインイベントに行く機会がありました。
そこでデンマークの建築家、ビャルケ・インゲルス氏の講演スライドを見て、単純に「かっこいい、僕もこういうの作りたい」と思ったのが、デザインに興味を持った最初のきっかけです。
翌年、2回目の香港でB&Oの当時のCEO、トゥエ・マントーニ氏の講演を聞きました。
「なぜ僕たちはただの四角いスピーカーを作らないのか。それは、僕たちがデザインしているのはスピーカーではなく、コミュニケーションが取られる空間だからだ」。
正確な訳ではないと思いますが、当時はそう受け取りました。
見えているものではなく、その裏にある意図や関係性をデザインするというあり方に、素直に感動し、また憧れたのを覚えています。
帰国後は、早速貯金を始め、Macを購入し、keynoteを実際にいじりながら、スライドのデザインを工夫するようになりました。
同時にIllustratorも覚え、ある程度触れるようになると、街の企業ロゴが自然と目に入るようになり、
「フォントは何か、モチーフは何か、なぜこのモチーフなのか」と、勝手に考えにふけるようになりました。
気づけば自分の名前のマークを遊びで作りながらマークや記号などへの理解を深めるようになりました。
当時のAdobeのソフトはCDで、欲しいソフト以外にもいくつか同梱されていたものがありました。
その中にDreamweaverが入っていたのがもったいなく、友人のかっこいいサイトを真似したくて始めたんです。
htmlとcssから始めて、そのうちコードの側に興味が移っていきました。
デザインを考えていたいのに、のめり込むほどエンジニアのような視点も増えていき、勉強の終わりが見えません。
就職してからは、なかなかやりたいことができない時期が何度もありました。
同じような苦しさを、場所を変えて何度も繰り返した気がします。
だからこそ今は、自分で考えて自分で実行できることを一番大事にしています。
個人事業主として独立しているのは、その反動が一番大きい理由です。
以前、業務委託で全国のローカルニュースを作る仕事をしていたとき、記者としていろんな地方でいろんな取り組みをしている人に取材する機会がありました。
僕は秋田在住なので、秋田県の方が多かったですが。
そこで一番聴きやすい質問が「なんでこれを始めたんですか?」でした。
そうすると十人十色の答えが返ってくるんですが、それが面白いんです。
「エナジードリンクの会社に勤めていたけど、体に悪いから甘酒で再現した」とか、「50年前、溶けないソフトクリームを作りたくてカッチカチのハードクリームを作ってみた」とか。
一つ一つのエピソードが今の活動につながっていて、まるで劇画のようなドラマがあるなと感じました。人にはそれぞれドラマがある、という感覚です。
だから僕は今でも「なんでやってるんですか」をいつも聞いています。
大体の答えはそこにあると思っていて、ビジョンとかターゲットとか、難しいカタカナを覚えなくても、その原点の中にすでに目指すべきものが含まれていると思っています。それは唯一無二だから、自然と形になっていくものだと思っています。
今はwebサイトやロゴマークの制作を中心に、Difyとの連携やブランディングなども行っています。
やっていることは、結局あの香港での気づきの延長にあると思っています。
目の前の見た目だけではなく、その裏にある意図や関係性を形にすること。
それを、自分で決めた形でやっています。